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ここ数年、モバイルゲーム業界では、収益を生み出すための2つの主要なマネタイズモデル ― アプリ内広告(IAA)とアプリ内課金(IAP)― が最適化され、ほぼ完成の域に達しています。この2つを通して得られた収益は、革新的で魅力的なプレイ体験の開発に再投資されてきました。
今までは、こういった従来の手法は確かに有効でした。一方で現在のモバイルゲームパブリッシャーは、高額なプラットフォーム手数料、増加するユーザー獲得コストと競争、そしてプライバシー規制のたび重なる変更など、複数の大きな課題に直面しています。そしてこれらの要因が重なり、モバイルゲームの収益性を圧迫する事態となっています。
こうした複雑な状況の中で、新たなマネタイズ手法として注目されているのがDTC(直販)型のウェブショップです。これらのオンラインショップはプラットフォームを独占する中間業者を介さないため、ゲームの収益構造に変化をもたらしています。パブリッシャーとプレイヤーとの関係をより直接的かつ収益性の高いものへと導く可能性を秘めているのです。ただし、この方法にも独自の課題が存在しています。
本記事では、モバイルゲームにおけるDTC型ウェブショップの世界に迫ります。競争激化の中で、パブリッシャーがいかにしてウェブ上での競争に向けて動き、収益戦略を刷新し、利益率を維持しようとしているのか、詳しく見ていきます。
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2008年のApple App Storeの登場以降、モバイルアプリパブリッシャーが収益を上げ、ユーザーをマネタイズする手法は大きく進化してきました。App Store初期には、有料アプリが主流の収益モデルであり、Appleは当時、毎日100万米ドル以上の収益が生まれていると発表していました。
有料アプリの価格競争が激化する中、2009年にAppleは無料アプリにおけるアプリ内課金(IAP)を導入2しました。これにより、「無料」の人気ゲームが競争力を維持しながら収益を上げる新たな手段が誕生したのです。IAPによるマネタイズを採用した「フリーミアム」型と呼ばれるゲームは急速に拡大しました。そして『Candy Crush』のようなタイトルは、世界で1日100万米ドル3の売上をIAPから生み出したのです。
しかしながら、IAPモデルにも課題はありました。たとえば、全ユーザーのうち20%が収益の80%を生み出すという「パレートの法則」です。実際には、さらに偏りが見られました。Swrve4が行った2014年の調査によれば、F2P(基本無料)ゲームユーザーのうち、実際に課金するのはわずか2.2%に過ぎなかったのです。これを受けて、Appleは2016年にサブスクリプション機能を導入し、パブリッシャーが定期収益を得られるようにしました。
IAPが向き合う課題と並行して、業界の別の分野はアプリ内広告(IAA)を模索し、配置方法や表示トリガーの工夫を重ねながら、ユーザー体験と収益のバランスを取るイノベーションが進められていました。2010年代前半には、広告のパーソナライズやターゲティング精度の向上を可能にする高度なデータ分析基盤が登場し、モバイルにおける新たな転換期を迎えました。
そして現在、IAAとIAPの両モデルは進化を遂げた一方で、それと同時に、既存モデルの可能性を制限するような業界の変化や外的要因も現れています。たとえば、AppleやGoogleによる30%のプラットフォーム手数料は、IAPベースの収益に大きな影響を与えています。また、プライバシー規制の変化によって広告ターゲティングに必要なデータへのアクセスが制限され、広告収益にも影響が出ています。
こうした状況のなか、業界は新たな方向へと舵を切っています。利益率を損なうことなくユーザーの収益化を図る手段として、DTC型ウェブショップに取り組み始めているのです。
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モバイルゲームにおけるDTC(直販)型ウェブショップとは、プレイヤーがアプリ内ではなく、ゲームの公式ウェブサイトを通じてアイテムを購入できる仕組みを指します。パブリッシャーはこのショップ上で、スキン、パワーアップアイテム、さらにはゲームに関連したグッズなど、さまざまなゲーム内アイテムを販売することが可能です。このような取引は、GoogleやAppleといった従来のアプリストアを経由しないため、アプリストアの手数料を回避でき、より高い利益率でのマネタイズが可能になります。
さらに、アプリストアの標準的なアプリ内課金では手に入らない限定オファーや特別なゲーム内アイテムをDTC型ウェブショップで提供することで、プレイヤーにアプリ外での購入を促すことができます。これにより、プレイヤーとパブリッシャー双方にとってメリットのある「Win-Win」な関係が築けるのです。
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モバイルゲームパブリッシャーにとって、プレイヤーのLTV(ライフタイムバリュー)を高めながら利益率も向上させる戦略として、DTC型ウェブショップの重要性は高まっています。アプリストアを介さず、ゲーム内アイテムや限定コンテンツ、特別オファーなどを直接プレイヤーに販売することで、パブリッシャーはより高利益率の収益源を確保できるからです。
当社の2024年モバイルゲームにおけるグロース・レポートによると、プレイヤーの間ではすでにこうしたDTC型ショップに対する関心と受容が広がっているようです。プレイヤーの26%がパブリッシャーのDTC型ウェブショップを訪れることに対して前向きな回答をしています。さらに14%のプレイヤーはすでにDTC型ショップを利用し、限定IAP(アプリ内課金)の経験があると答えています。

Gradient Universe Games Analytics Consultancy 創設者であるオクサーナ・フォミナ氏は、以下のように述べています。「現在、多くのパブリッシャーがAppleやGoogleへの依存から脱するために、さまざまな収益手段の導入を試みています。特に注目すべきなのは、DTC型ウェブショップのような有望な代替手段の急速な台頭でしょう。今後も成長が続くと予想されています。」
DTC型ウェブショップは、価格設定やオファー内容に対するパブリッシャー自身によるコントロール性が高いだけでなく、高利益率なLTVを実現する手段としても注目されています。限定コンテンツやより直接的なカスタマー関係を提供することで、プレイヤーのエンゲージメントやリテンションを強化し、1人のプレイヤーから得られる価値を最大化することができるのです。
“これまでロイヤルティプログラムやVIPプレイヤー向け体験を積極的に導入していたのは主にカジノ系のデベロッパーでした。ですが、DTCやウェブショップの普及により、2025年には他ジャンルのゲームにもこの動きが広がるでしょう。こうしたプログラムは、最も熱心なプレイヤーにゲームをより深く楽しむ機会を提供するだけでなく、収益を大きく押し上げる要素となるのです。” – アーチー・ストーンヒル氏/Stash5 プロダクト責任者
とはいえ、新たな戦略には必ずメリットとデメリットの両面が存在します。DTC型ウェブショップは新たな収益の可能性を秘めていますが、同時にいくつかの課題も伴います:
しかしこういった課題は、パブリッシャーにとって、DTC型ウェブショップ導入の妨げになるものではありません。むしろ、高利益な収益性のポテンシャルが運用コストを上回ると判断するパブリッシャーが増えており、多くの企業がこの新たな収益戦略にシフトしています。より利益率の高い収益源を確保し、より深く忠実なプレイヤーベースを構築しようとしているのです。
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2016年に登場した『Pokémon GO』は、現実世界での探索を取り入れたゲームプレイによって、モバイルゲームのあり方を一変させました。そして2023年に導入された6DTC型ウェブショップは、そのビジョンを補完する形で設計されています。Nianticのウェブストアでは、限定のゲーム内アイテムやポケコインに加え、リワードロードと呼ばれるロイヤルティプログラムによる特典、さらにはリアルイベントのチケットなども販売されており、オンライン課金がゲームの中核となる体験(屋外における探索やソーシャル上での交流)と直接つながっているのが特徴です。このような戦略的連動により、すべての取引が『Pokémon GO』のブランドアイデンティティを強化しつつ、高利益の追加収益につながっています。
『Pokémon GO』 のDTC型モデルによる収益化の成功は、専用に設計されたウェブショップが従来のアプリ内課金の枠を超えて、エンゲージメントの向上を実現できることを示しています。例えば、外出を促すイベントチケットや、コミュニティの功績を記念したアバターアイテムを販売するなど、ゲームプレイの軸に沿ったオファーを用意することで、ウェブショップをゲーム体験の一部として自然に組み込んでいます。Nianticはユーザーをショップに引き付けながらも、ゲームへの愛着を深めることにも成功しているのです。実際、『Pokémon GO』は190カ国以上でプレイされており8、約50%のプレイヤーが毎日ログインしているという事実があります。DTC型ショップは、ゲームの中核となる体験を補うだけではなく、むしろ強化することを証明しているでしょう。
💡 学びのポイント:DTC型ウェブショップは、リアルイベントのチケット、コミュニティ報酬、没入感を高める限定アイテムなどを取り入れ、ゲーム独自の体験と強く結びつけることで最大限の効果を発揮します。
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ソーシャルカジノゲームでは昔から、レベル分けをするVIPプログラムが収益源として機能してきました。高価値プレイヤーには限定特典やより大きなボーナス、パーソナライズされたオファーが提供されてきました。こうしたモデルはDTC型ショップと非常に相性が良く、ゲームの収益化戦略をさらに強化することができます。アプリ外でもよりプレミアムな価値を提供し、さらに高い利益率を実現することができるのです。
このモデルの有効性を証明しているのが、ソーシャルカジノ業界におけるリーディングカンパニーであるHuuuge Gamesです。DTCによる同社の収益は2023年に3倍(1,660万米ドル)に増加し、さらに2024年には92%成長。そして現在は、DTCが総売上の10.8%を占めていると2024年第3四半期のレポート9で報告されています。
成功の要因は以下の通りです:
DTC型ウェブショップは、ソーシャルカジノゲームに最適なプラットフォームであると言えます。当社の2024年版モバイルゲーム課金ユーザーについてのレポートによれば、平均的な課金ユーザーと比べて、ソーシャルカジノゲームのプレイヤーはより多くのタイトルでより頻繁に課金する傾向があります。実際、ラッキー・ルーシー(ソーシャルカジノゲームをプレイするペルソナ)は、月に3回以上アプリ内課金をする可能性が最も高いペルソナです。
💡学びのポイント: 成功しているパブリッシャーのDTC型ショップでは、ゼロから何かを作るのではなく、既にゲーム内で機能している仕組みを強化することに焦点を当てています。ソーシャルカジノならVIPプログラムの構築、他のジャンルであれば競争的なプレイヤー向けの限定スキンや、コミュニティを盛り上げるイベントチケットなど、プレイヤーが動機付けられる要素を見極め、それをDTC戦略に落とし込み、補強していくことが重要です。
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Electronic Arts(EA)の『Star Wars: Galaxy of Heroes』は、フランチャイズと連動したDTC型ウェブショップによって、安定的に収益を生み出しながら、プレイヤーたちのスター・ウォーズの世界観へのエンゲージメントをさらに高めています。一般的なモバイルストアとは異なり、このウェブショップでは、購入行動そのものが「反乱軍 vs 帝国」という銀河戦争の延長線上にある、という仕掛けになっています。
このゲームにおけるDTC型ショップ成功の鍵は、スター・ウォーズのファン心理を的確に捉えていることにあります。つまり、「自らの忠誠心を表明し、象徴的なキャラクターたちをコレクションしたい」という欲求を捉えているのです。標準的なバンドル販売は行わず、「Large Galactic Enhancement Kit」のような通貨バンドルや、「Hyperdrive Bundle Pack」のように人気キャラやゲーム内リソースが詰まったアイテムバンドルを販売しています。
このモデルが成功した理由は、購入体験がスター・ウォーズ世界観と強くリンクしているからです。例えばキャラクターを期間限定でアンロックすることで、シンプルな課金行動が「自分だけの戦力を戦略的に編成する行為」に変わります。すべてのアイテムが「愛すべき世界観の一員である」というファンタジーを強化する設計になっています。
💡学びのポイント: スター・ウォーズのようなフランチャイズ系ゲームは、熱心なファン心理に訴求することでDTC戦略において圧倒的な強みを発揮します。一方で、この手法はどのゲームでも再現可能です。ポイントは、例えばポップカルチャーとのコラボ、インフルエンサーのバンドル販売、テーマ性のあるイベントなどを活用し、プレイヤーの情熱とウェブショップの内容を一致させること。課金を単なる支出ではなくゲーム体験の一部に変えることができれば、課金行動は自己表現に変わるのです。
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DTC型ウェブショップは、モバイルゲームのマネタイズを、プラットフォーム依存型からプレイヤー中心型の経済モデルへと進化させています。すでに多くのモバイルゲーム企業がDTC戦略に取り組んでいますが、成功を収める パブリッシャーは、今後DTCストアを単なる「決済ページ」ではなく、「戦略的資産」として活用する企業になるでしょう。この戦いの勝者は、ただアイテムを販売するのではなく、プレイヤーに「自分は特別な仲間である」と感じさせる、没入感ある購入体験を提供していくでしょう。
“デベロッパーが自らのデジタル体験に積極的に関与し、ブランド体験をコントロールすることで、成長を実感し始めている、ということです。” – バークレー・エジェネス氏/Xsolla (11) チーフマーケティング&グロースオフィサー
アプリストアの手数料やユーザー獲得コストが収益性を圧迫し続ける中で、ウェブショップを通じてプレイヤーと直接的かつ高価値な関係を築けるかどうか — および代替的な配信プラットフォームの可能性を追求すること — が、モバイルゲームの次章における競争優位性の決定的な要因になるかもしれません。
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参考文献: